問題解決を進めるとき、原因を分析することは非常に大切です。
なぜ不良が発生したのか。
なぜ作業ミスが起きたのか。
なぜ設備トラブルが続いているのか。
なぜ納期遅れが発生したのか。
なぜクレームにつながったのか。
このように原因を考えることは、問題解決の基本です。
しかし、原因が分かったとしても、それだけで問題が解決するわけではありません。
次に必要になるのは、
では、具体的に何をするのか
という手段を考えることです。
問題解決でよくあるのは、目標や方針は決まっているのに、実行する内容が曖昧なまま進んでしまうことです。
不良を減らす。
作業ミスを防ぐ。
検査精度を上げる。
設備停止を減らす。
再発防止を徹底する。
現場の安全性を高める。
情報共有を強化する。
これらは大切な目標です。
しかし、このままでは抽象的です。
「不良を減らす」と言っても、何を変えるのか。
「作業ミスを防ぐ」と言っても、どの作業にどんな仕組みを入れるのか。
「再発防止を徹底する」と言っても、誰が、いつ、何を確認するのか。
ここまで具体化しなければ、現場の行動にはつながりません。
そこで役立つのが、新QC七つ道具の一つである
系統図法
です。
系統図法とは、目的や目標を達成するために必要な手段を、段階的に分解して整理する手法です。
大きな目的から始めて、そのための手段を考え、さらにその手段を実行可能な具体策へと掘り下げていきます。
簡単に言えば、系統図法は、
「何を達成したいのか」から「何を実行するのか」までをつなぐ道具
です。
問題解決では、原因分析だけでなく、対策の具体化が重要です。
系統図法を使えば、漠然とした方針を、実行できる手段に落とし込むことができます。
つまり系統図法は、
問題解決の道筋を見える化し、対策を実行レベルまで具体化するための手法
なのです。
系統図法とは何か
系統図法とは、目的を達成するための手段を、段階的に展開していく手法です。
まず、最終的に達成したい目的を決めます。
次に、その目的を達成するためには何が必要かを考えます。
さらに、その手段を実行するためには何をすればよいかを考えます。
このように、目的から手段へ、手段からさらに具体的な手段へと分解していきます。
例えば、目的が
「作業ミスを減らす」
だとします。
そのための手段として、
作業手順を分かりやすくする。
確認しやすい仕組みを作る。
教育を強化する。
ミスしにくい作業環境にする。
といった項目が考えられます。
さらに、
「作業手順を分かりやすくする」
という手段を具体化すると、
写真付き手順書にする。
重要ポイントを赤枠で表示する。
作業順序を番号で示す。
新人でも分かる表現に直す。
現場で手順書を確認できる位置に掲示する。
という具体策に落とし込めます。
このように、抽象的な目的を具体的な行動に分解していくのが系統図法です。
系統図法は「目的」と「手段」をつなぐ
問題解決では、目的と手段がずれてしまうことがあります。
例えば、目的は不良低減なのに、対策が単なる注意喚起で終わってしまう。
目的は再発防止なのに、実施内容が一回限りの教育で終わってしまう。
目的は作業ミス防止なのに、現場の仕組みは何も変わっていない。
このような状態では、対策の効果は限定的になります。
系統図法を使うと、目的と手段の関係を整理できます。
目的は何か。
その目的を達成するためには、どのような手段が必要か。
その手段を実行するには、具体的に何をするか。
その具体策は、本当に目的につながっているか。
この流れを見える化できます。
問題解決では、
目的に合った手段を選ぶこと
が重要です。
手段が目的から外れていると、いくら頑張っても成果につながりにくくなります。
系統図法は、目的と手段のつながりを確認するために役立ちます。
抽象的な目標を具体策に変える
職場では、抽象的な目標がよく使われます。
品質を向上させる。
安全意識を高める。
作業効率を上げる。
ムダを減らす。
再発防止を徹底する。
管理レベルを上げる。
これらは方向性としては正しいです。
しかし、そのままでは実行できません。
例えば、
「品質を向上させる」
と言われても、現場では何をすればよいのか分かりにくいです。
検査を強化するのか。
作業標準を見直すのか。
設備条件を安定させるのか。
材料管理を見直すのか。
教育を改善するのか。
設計段階から品質を作り込むのか。
目標を具体策に落とし込まなければ、行動につながりません。
系統図法は、抽象的な目標を段階的に具体化できます。
大きな目的を中くらいの手段に分け、さらに小さな実行策に分ける。
この流れによって、現場で動けるレベルまで落とし込めます。
つまり、系統図法は、
方針を行動に変えるための手法
なのです。
系統図法の基本的な作り方
系統図法を作るときは、まず最終目的を明確にします。
例えば、
「外観不良を半減させる」
「作業ミスを再発させない」
「設備停止時間を削減する」
「検査の見落としを防ぐ」
「新人作業者でも安定して作業できるようにする」
などです。
次に、その目的を達成するための大きな手段を考えます。
例えば、外観不良を半減させる目的なら、
発生原因をつぶす。
検出力を高める。
作業環境を整える。
材料・部品の管理を強化する。
作業方法を標準化する。
といった大きな手段が考えられます。
さらに、それぞれの手段を具体化します。
「作業方法を標準化する」なら、
作業手順書を改訂する。
写真付きで重要ポイントを示す。
良品・不良品の限度見本を準備する。
作業者教育を実施する。
標準作業の遵守状況を確認する。
という具体策になります。
このように、目的から手段へ、手段から具体策へと展開していきます。
「なぜ」ではなく「どうするか」を展開する
問題解決では、なぜなぜ分析がよく使われます。
なぜなぜ分析は、原因を深掘りするための手法です。
一方、系統図法は、
どうするか
を展開する手法です。
ここを混同しないことが大切です。
なぜ不良が起きたのか。
なぜ作業ミスが発生したのか。
なぜ設備が止まったのか。
これは原因分析です。
それに対して、
不良を減らすにはどうするか。
作業ミスを防ぐにはどうするか。
設備停止を減らすにはどうするか。
再発防止するにはどうするか。
これは手段の展開です。
なぜなぜ分析は、原因を掘り下げます。
系統図法は、対策を掘り下げます。
つまり、原因を明確にした後、対策を具体化する段階で系統図法が役立ちます。
問題解決では、
原因分析で終わらず、具体策まで落とし込むこと
が重要です。
系統図法は、その橋渡しをしてくれます。
対策の抜け漏れを防ぐ
系統図法を使うメリットの一つは、対策の抜け漏れを防ぎやすいことです。
問題が発生したとき、思いついた対策だけで進めると、重要な手段を見落とすことがあります。
例えば、作業ミスを防ぐ対策として、教育だけを行ったとします。
しかし、手順書が分かりにくいままなら、ミスは再発するかもしれません。
作業台の配置が悪いままなら、確認しにくい状態は残るかもしれません。
表示が分かりにくいままなら、新人は迷うかもしれません。
設備側のポカヨケがなければ、人の注意に頼る状態が続くかもしれません。
系統図法で手段を広く展開すれば、
教育。
手順。
表示。
設備。
治具。
確認方法。
作業環境。
管理方法。
といった複数の視点から対策を考えられます。
このように、系統図法は対策を一方向に偏らせず、全体を見ながら具体化できます。
手段を実行可能なレベルまで下げる
系統図法では、手段を実行可能なレベルまで下げることが重要です。
例えば、
「教育を強化する」
という手段があります。
しかし、このままではまだ抽象的です。
教育を強化するとは、具体的に何をするのでしょうか。
教育資料を改訂する。
作業動画を作成する。
理解度テストを実施する。
現場で実技確認を行う。
教育記録を残す。
再教育の基準を決める。
新人向けと経験者向けで内容を分ける。
ここまで具体化すると、実行しやすくなります。
同じように、
「作業標準を見直す」
だけでは不十分です。
どの手順書を見直すのか。
誰が見直すのか。
どの工程を対象にするのか。
何を追加するのか。
いつまでに改訂するのか。
現場への周知はどうするのか。
改訂後の遵守確認はどうするのか。
ここまで落とし込む必要があります。
系統図法では、最終的に
担当者が行動できる具体策
まで展開することが大切です。
系統図法はチームで作ると効果が高い
系統図法は、一人で作ることもできます。
しかし、できれば関係者で作る方が効果的です。
なぜなら、一人で考えると、手段が自分の知識や経験に偏りやすいからです。
現場作業者は、実際の作業のやりにくさを知っています。
設備担当者は、設備改善の可能性を知っています。
品質担当者は、不良データや顧客要求を知っています。
管理者は、方針やリソースの制約を知っています。
生産管理担当者は、納期や生産計画への影響を知っています。
こうした立場の違う人が参加すると、実行可能で効果的な手段が出やすくなります。
また、系統図法を一緒に作ることで、関係者の認識もそろいます。
何を目的にするのか。
どの手段を重視するのか。
どこまで具体化するのか。
誰が何をするのか。
これを共有できるため、実行段階に移りやすくなります。
系統図法は、単なる図ではなく、関係者で対策を組み立てるための道具でもあります。
系統図法と特性要因図の違い
系統図法と似たように、枝分かれした図を使う手法に特性要因図があります。
特性要因図は、問題の原因候補を整理するための手法です。
例えば、寸法不良という問題に対して、人、設備、材料、方法、測定、環境などの視点で原因候補を洗い出します。
一方、系統図法は、目的を達成するための手段を整理する手法です。
特性要因図は、
「なぜ起きたのか」
を整理します。
系統図法は、
「どうすればよいのか」
を整理します。
この違いを理解して使うことが大切です。
問題解決の流れで言えば、まず特性要因図やなぜなぜ分析で原因を整理します。
その後、系統図法で対策や実行手段を具体化します。
原因分析と対策立案は別の作業です。
系統図法は、対策立案の段階で力を発揮します。
系統図法はPDCAのPlanを強くする
系統図法は、PDCAサイクルのPlan段階で特に役立ちます。
PDCAのPlanでは、問題を明確にし、目標を決め、対策を計画します。
しかし、このPlanが曖昧だと、その後のDo、Check、Actも弱くなります。
例えば、Planに
「作業ミスを減らすために教育する」
とだけ書かれていた場合、実行内容が曖昧です。
誰に教育するのか。
何を教育するのか。
どの資料を使うのか。
理解度をどう確認するのか。
教育後に現場でどう確認するのか。
効果をどう測るのか。
これが不明確なままでは、実行も確認も難しくなります。
系統図法を使えば、Planの内容を具体化できます。
大きな目的から実行手段まで展開できるため、Doにつなげやすくなります。
つまり系統図法は、
計画を実行できるレベルにするための手法
です。
PDCAを回すためには、Planの質が重要です。
系統図法は、そのPlanを強くします。
系統図法は再発防止にも役立つ
問題解決で重要なのは、一時的な処置で終わらせないことです。
同じ問題を繰り返さないためには、再発防止策を具体化する必要があります。
例えば、不良品を取り除くことは処置です。
追加検査を行うことは流出防止です。
しかし、再発防止には、同じ不良が再び発生しない仕組みが必要です。
系統図法を使うと、再発防止のために必要な手段を整理できます。
原因をなくす。
標準作業に反映する。
教育に反映する。
点検項目に入れる。
設備側でミスを防ぐ。
異常が出たらすぐ分かるようにする。
管理者が定期確認する。
他工程へ水平展開する。
このように、再発防止を複数の視点から具体化できます。
再発防止は、
「注意する」
だけでは弱いです。
注意しなくてもミスしにくい仕組み。
異常に早く気づける仕組み。
標準から外れにくい仕組み。
誰がやっても同じ結果になる仕組み。
そこまで考えることが必要です。
系統図法は、その仕組みづくりを整理するために役立ちます。
手段の優先順位を考える
系統図法で多くの手段を出したら、すべてを同時に実行するわけではありません。
次に、優先順位を考える必要があります。
対策には、すぐできるものもあれば、時間や費用がかかるものもあります。
効果が大きいものもあれば、効果が限定的なものもあります。
現場負担が小さいものもあれば、大きいものもあります。
そのため、出てきた具体策を評価します。
効果は大きいか。
実行しやすいか。
費用は妥当か。
安全上の問題はないか。
品質リスクはないか。
現場負担は大きすぎないか。
短期でできるか。
長期的な仕組み改善になるか。
このような視点で優先順位を決めます。
系統図法は、手段を出すだけで終わりではありません。
出した手段の中から、実行するものを選び、計画に落とし込むことが重要です。
系統図法を使うときの注意点
系統図法を使うときには、いくつか注意点があります。
まず、目的を曖昧にしないことです。
目的が曖昧だと、展開される手段も曖昧になります。
例えば、
「品質を良くする」
では広すぎます。
「A工程の外観傷を3か月で半減させる」
のように具体化した方が、手段を考えやすくなります。
次に、手段が目的につながっているかを確認することです。
枝分かれした手段が増えていくと、途中で目的から外れることがあります。
常に、
「この手段は目的達成につながるか」
を確認する必要があります。
また、抽象的な言葉で止めないことも大切です。
「強化する」「徹底する」「見直す」「改善する」だけでは、実行内容が分かりません。
具体的な行動まで落とし込む必要があります。
さらに、実行できない理想論だけで終わらせないことも重要です。
現場の人員、時間、費用、設備制約を考え、実行可能な形にする必要があります。
系統図法を作って終わりにしない
系統図法でよくある失敗は、図を作っただけで満足してしまうことです。
目的を決めた。
手段を展開した。
具体策を並べた。
資料にまとめた。
しかし、その後に実行計画がない。
担当者が決まっていない。
期限がない。
効果確認の方法がない。
この状態では、問題解決にはつながりません。
系統図法は、あくまで対策を具体化するための道具です。
本当に重要なのは、具体化した内容を実行することです。
そのためには、最後に次のことを決める必要があります。
何を実行するのか。
誰が担当するのか。
いつまでに行うのか。
どの範囲で実施するのか。
効果をどう確認するのか。
うまくいったらどう標準化するのか。
ここまで決めて、初めて系統図法は問題解決に活きます。
管理者が見るべきこと
管理者が系統図法を見るときには、図の形が整っているかだけを見てはいけません。
見るべきことは、
- 目的は具体的か
- 目的と手段のつながりは明確か
- 手段が抽象的な言葉で止まっていないか
- 実行可能な具体策まで展開されているか
- 対策に抜け漏れはないか
- 関係者の視点が入っているか
- 優先順位が考えられているか
- 担当者と期限が明確か
- 効果確認の方法があるか
- 標準化や再発防止につながっているか
です。
管理者にとって重要なのは、
「対策を考えたか」
ではなく、
「実行できる対策になっているか」
を見ることです。
系統図法は、現場に行動を押しつけるためのものではありません。
目的を達成するために、必要な手段を整理し、実行につなげるためのものです。
管理者がその視点で見れば、系統図法は非常に有効な問題解決の道具になります。
まとめ
系統図法は、新QC七つ道具の一つであり、問題解決に役立つ手法です。
目的や目標を達成するために必要な手段を段階的に展開し、具体的な実行策まで落とし込むことができます。
問題解決では、原因分析だけでは不十分です。
原因が分かった後に、どのような対策を行うのかを具体化しなければなりません。
系統図法は、その対策を考える段階で大きな力を発揮します。
抽象的な目標を具体策に変える。
目的と手段のつながりを整理する。
対策の抜け漏れを防ぐ。
実行可能なレベルまで落とし込む。
再発防止の仕組みを考える。
PDCAのPlanを強くする。
これが系統図法の大きな役割です。
ただし、系統図法は作って終わりではありません。
展開した手段を、担当者、期限、実施範囲、効果確認方法まで決めて、実行に移す必要があります。
系統図法は、単なる枝分かれ図ではありません。
目的を具体的な手段に落とし込み、問題解決の道筋を見える化するための実務的な道具
です。
問題解決で大切なのは、方針を掲げるだけで終わらせないことです。
「何を達成したいのか」から「何を実行するのか」までをつなげる。
その力を持っているのが、系統図法なのです。

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