品質問題が発生したとき、多くの職場では原因を深く掘り下げようとします。
なぜ不良が発生したのか。
なぜ作業者が間違えたのか。
なぜ検査で見逃したのか。
なぜ設備異常に気づけなかったのか。
なぜ同じ問題が繰り返されたのか。
このように「なぜ」を重ね、根本にある原因へ近づいていくことは、品質改善において非常に重要です。
しかし、原因を深く掘り下げるだけで、十分な原因分析になるとは限りません。
ある一つの原因を深く追いかけた結果、その原因に対する対策はできた。
それにもかかわらず、別の設備で似た不良が発生した。
別の作業者が、違う場面で同じようなミスをした。
同じ仕組みの弱点が、他工程にも残っていた。
一つの原因を改善した後に、別の原因で同じ問題が再発した。
このようなことがあります。
なぜなら、品質問題には、
原因の深さ
だけでなく、
原因の広がり
があるからです。
原因分析では、一つの原因を深く追う「縦の展開」が必要です。
同時に、別の原因候補、類似工程、他設備、他製品などへ視点を広げる「横の展開」も必要です。
縦の展開だけでは、真因に近づくことはできます。
しかし、他に残っている原因や同じ弱点を見落とす可能性があります。
横の展開だけでは、多くの原因候補を出すことはできます。
しかし、どの原因が本当に問題へつながっているのか分からないままになります。
品質改善では、
縦に深く掘り、横に広く見る
ことが重要です。
原因を深く掘る。
原因候補を広く出す。
類似する場所にも同じ弱点がないか確認する。
一つの原因だけで問題を説明しようとしない。
この考え方を持つことで、原因分析の精度は高まり、再発防止も強くなります。
原因分析における「縦」と「横」とは何か
原因分析における縦の展開とは、一つの原因を深く掘り下げていくことです。
問題が起きた直接的なきっかけから始めて、なぜその状態になったのかを段階的に追っていきます。
例えば、部品の取り違えが発生したとします。
なぜ取り違えたのか。
似た部品が隣に置かれていたから。
なぜ隣に置かれていたのか。
置き場の区分が明確でなかったから。
なぜ区分が明確でなかったのか。
保管場所の表示ルールが決められていなかったから。
なぜ表示ルールが決められていなかったのか。
新しい部品を導入した際に、保管方法を確認する仕組みがなかったから。
このように、一つの原因を奥へ奥へと掘り下げるのが縦の展開です。
一方、横の展開とは、原因を複数の視点へ広げて考えることです。
部品を取り違えた原因は、置き場だけではないかもしれません。
部品の形状が似ていた。
表示文字が小さかった。
照明が暗かった。
作業手順に照合工程がなかった。
作業時間に余裕がなかった。
教育内容が不十分だった。
設備側で誤投入を防止できなかった。
このように、原因候補を広く洗い出すのが横の展開です。
縦は深さ。
横は広さ。
原因分析では、この両方が必要です。
縦の展開は真因へ近づくために行う
品質問題が起きたとき、最初に見つかるのは直接原因であることが多いです。
作業者が確認を忘れた。
設備の設定値が違っていた。
材料を取り違えた。
検査で見落とした。
記録を記入しなかった。
これらは、問題が発生した直前の行動や状態です。
しかし、ここで原因分析を止めると、対策は表面的になります。
確認を忘れたので注意する。
設定値を間違えたので教育する。
材料を取り違えたので再周知する。
見落としたので検査を増やす。
記入しなかったのでチェックを追加する。
これでは、なぜその行動が起きたのかが残ったままです。
縦の展開では、直接原因の背景をさらに掘り下げます。
なぜ確認を忘れたのか。
なぜ設定値を間違えたのか。
なぜ材料を取り違えたのか。
なぜ検査で見落としたのか。
なぜ記入しにくい状態だったのか。
この問いを重ねて、仕組みの弱点へ近づきます。
縦の展開の目的は、人の失敗を細かく追及することではありません。
その失敗を生み出した管理や仕組みの弱点を見つけること
です。
縦に掘るときは事実のつながりを確認する
「なぜ」を繰り返せば、必ず正しい原因にたどり着くわけではありません。
よくある失敗は、事実を確認せず、想像だけで原因をつないでしまうことです。
なぜミスしたのか。
注意力が低かったから。
なぜ注意力が低かったのか。
本人の意識が低かったから。
なぜ意識が低かったのか。
品質への責任感が不足していたから。
このような展開は、人の性格や意識へ向かいやすく、具体的な改善につながりません。
本当に注意力が低かったのでしょうか。
作業環境や手順に問題はなかったのでしょうか。
他の作業者でも同じミスが起きる可能性はないのでしょうか。
縦に掘るときには、各段階のつながりを事実で確認する必要があります。
記録を見る。
現場を確認する。
関係者から話を聞く。
実際の作業を再現する。
設備履歴や変更履歴を調べる。
このように確認しながら掘り下げます。
「なぜ」に対する答えが事実で支えられていなければ、それは真因ではなく仮説です。
縦の展開では、深さだけでなく、
因果関係の確かさ
が重要です。
横の展開は思い込みを防ぐ
原因分析では、最初に見つけた原因に飛びついてしまうことがあります。
特定の作業者が関係していた。
ある設備で発生した。
特定の材料が使われていた。
作業手順が守られていなかった。
この情報だけで、原因を決めたくなることがあります。
しかし、問題には複数の要因が関係している場合があります。
作業者の操作だけでなく、設備条件も影響していた。
材料ロット差だけでなく、保管温度も影響していた。
検査員の判定だけでなく、照明環境や限度見本にも問題があった。
手順違反だけでなく、標準書が実際の作業に合っていなかった。
横の展開を行うことで、原因を一方向から決めつけることを防げます。
人、設備、材料、方法、測定、環境。
工程、時間、場所、製品、ロット、作業者。
複数の視点から原因候補を出します。
横に広く考えることで、見落としていた原因候補が見えてきます。
横に展開するときは4M・6Mが役立つ
原因を横に広げるときには、4Mや6Mの視点が役立ちます。
4Mとは、一般的に次の視点です。
人。
設備。
材料。
方法。
さらに、測定と環境を加えたものが6Mです。
例えば、寸法不良が発生した場合を考えます。
人の視点では、作業方法、習熟度、調整方法、教育内容を確認します。
設備の視点では、精度、摩耗、条件設定、保全状態を確認します。
材料の視点では、ロット差、特性、保管状態を確認します。
方法の視点では、作業標準、加工条件、作業順序を確認します。
測定の視点では、測定器、測定位置、測定方法、測定者差を確認します。
環境の視点では、温度、湿度、振動、照明などを確認します。
このように、原因を横方向へ広げていくことで、原因候補の抜けを防ぎやすくなります。
ただし、4Mや6Mの項目を埋めること自体が目的ではありません。
問題に関係する可能性を考え、事実で確認することが大切です。
縦だけでは見落とす問題がある
縦の展開は、真因を深く追ううえで有効です。
しかし、最初に選んだ原因候補が間違っていると、間違った方向を深く掘ることになります。
例えば、外観傷の原因を作業者の取り扱いと考え、なぜなぜ分析を進めたとします。
なぜ傷がついたのか。
作業者が製品を作業台へ強く置いたから。
なぜ強く置いたのか。
作業時間に余裕がなかったから。
なぜ余裕がなかったのか。
生産計画が厳しかったから。
この分析は、一見すると筋が通っています。
しかし、実際には搬送装置のガイドが製品へ接触していたかもしれません。
材料表面の保護状態が変わっていたかもしれません。
作業台に小さな異物が付着していたかもしれません。
最初から人の作業だけに絞ってしまうと、他の原因を見落とします。
そのため、縦に掘る前に、または縦に掘りながら、横にも広げる必要があります。
横だけでは真因を特定できない
横の展開を行うと、多くの原因候補が出ます。
人の問題。
設備の問題。
材料の問題。
方法の問題。
測定の問題。
環境の問題。
しかし、原因候補をたくさん並べただけでは、真因は分かりません。
特性要因図を作った。
付箋に原因候補をたくさん書いた。
会議で多くの意見が出た。
これだけでは原因分析は完了していません。
原因候補の中から、実際に問題へ関係しているものを絞り込み、深く確認する必要があります。
特定設備だけで発生しているのか。
特定材料ロットだけで発生しているのか。
作業者が変わっても発生するのか。
設備条件を変えると結果が変わるのか。
測定方法を統一すると差がなくなるのか。
このように検証し、重要な原因候補を縦に掘ります。
横の展開は入口です。
縦の展開で、真因に近づきます。
「縦に掘る」と「横に広げる」を往復する
原因分析は、縦と横を一回ずつ行えば終わるものではありません。
実際には、縦と横を行き来しながら進めます。
まず横に広げて、原因候補を出します。
その中から可能性の高いものを選び、縦に掘ります。
縦に掘る途中で新しい原因候補が見つかったら、再び横へ広げます。
そして、その原因をさらに縦に確認します。
例えば、寸法不良の原因候補として設備条件を調べたとします。
縦に掘ると、設定値が安定していないことが分かりました。
さらに調べると、作業者ごとに調整方法が違うことが分かりました。
ここで横へ広げます。
作業者の教育だけの問題か。
作業標準に調整方法が明記されているか。
設備側で設定値を固定できないか。
測定結果を確認して自動補正できないか。
管理者による承認ルールは必要ないか。
このように縦と横を往復することで、原因分析は深まります。
発生原因と流出原因を分けて考える
品質問題では、一つの不良に対して少なくとも二つの視点があります。
なぜ不良が発生したのか。
なぜその不良を工程内で発見できなかったのか。
前者が発生原因です。
後者が流出原因です。
例えば、寸法不良が顧客へ流出した場合、発生原因は設備条件の異常かもしれません。
一方、流出原因は、工程内測定の頻度が不足していたことや、検査基準が不十分だったことかもしれません。
発生原因だけを対策しても、別の不良が発生したときに流出する可能性が残ります。
流出原因だけを対策しても、不良そのものは作られ続けます。
原因分析を横に展開するときには、
- 発生させた原因
- 発見できなかった原因
- 拡大させた原因
- 情報共有が遅れた原因
- 再発を防げなかった原因
に分けて見ることが有効です。
問題を一つの原因だけで説明しようとせず、複数の役割に分けて見ることで、再発防止が強くなります。
直接原因と管理上の原因を分ける
原因分析では、直接原因だけでなく、管理上の原因も確認する必要があります。
直接原因とは、不良やミスを直接発生させた原因です。
設備の設定値が間違っていた。
部品を取り違えた。
工具が摩耗していた。
検査基準を誤って解釈した。
一方、管理上の原因とは、その状態を防げなかった仕組み上の原因です。
設定値を確認する仕組みがなかった。
似た部品を識別するルールがなかった。
工具交換基準が決められていなかった。
判定教育と力量確認が不十分だった。
直接原因への対策だけでは、似た問題が形を変えて再発することがあります。
例えば、間違えた設定値を正しい値に戻すだけでは、別の作業者が再び間違える可能性があります。
管理上の原因まで掘り下げ、設定値の登録管理や変更権限、確認方法を見直す必要があります。
縦の展開では、直接原因から管理上の原因まで掘り下げることが重要です。
原因分析後は類似箇所へ横展開する
原因分析における横の展開には、原因候補を広く出すことだけでなく、分析結果を他の場所へ広げる意味もあります。
一つの工程で原因が分かったら、他の工程にも同じ弱点がないか確認します。
同型設備でも同じ設定ミスが起きないか。
類似製品でも同じ取り違えが起きないか。
他の作業標準にも同じ記載不足がないか。
他の検査工程にも判定基準の曖昧さがないか。
他の材料にも同じ保管上のリスクがないか。
問題が起きた場所だけを直すと、別の場所で同じ問題が発生する可能性があります。
例えば、一台の設備で点検項目の不足が原因だった場合、同型設備すべてを確認します。
一つの作業手順書で重要ポイントの記載漏れがあった場合、類似手順書も確認します。
一つの材料で識別不備があった場合、他の類似材料の識別方法も確認します。
これが、改善後の横展開です。
原因分析は、一件の問題を閉じるだけでなく、組織全体の弱点を改善する機会として使うことが大切です。
縦と横の分析にはデータが必要である
縦にも横にも原因を展開するには、データが必要です。
横に展開するときには、どこで問題が多いかを確認します。
工程別。
設備別。
作業者別。
製品別。
材料ロット別。
時間帯別。
発生場所別。
この層別によって、問題の偏りが見えます。
縦に展開するときには、原因と結果のつながりを確認します。
設備条件を変えると不良率は変わるか。
材料ロットが変わると測定値は変わるか。
工具摩耗が進むと寸法は変化するか。
教育前後でミス件数は変わったか。
こうした確認に、グラフ、散布図、ヒストグラム、時系列データなどが役立ちます。
原因分析は、考えるだけでは不十分です。
仮説をデータで確かめることが必要です。
縦と横の原因分析を記録する
原因分析の結果は、図や記録に残すことが重要です。
どの原因候補を考えたのか。
どの方向に縦に掘ったのか。
どの事実を確認したのか。
どの原因候補を除外したのか。
最終的に何を真因と判断したのか。
どの類似箇所へ横展開したのか。
これらを残します。
記録がないと、なぜその原因と判断したのか分からなくなります。
後から別の人が見ても分析過程を追えません。
同じ問題が再発したときに、過去の分析を活かせません。
原因分析の記録は、報告書を埋めるためのものではありません。
組織として問題解決の知識を残すためのものです。
管理者が見るべきこと
管理者が原因分析を確認するときには、原因が一つ書かれているかだけを見るのでは不十分です。
見るべきことは、
- 原因を縦に十分掘り下げているか
- 直接原因だけで止まっていないか
- 管理上の原因まで確認しているか
- 原因候補を横に広く見ているか
- 人のミスだけに偏っていないか
- 発生原因と流出原因を分けているか
- 事実やデータで因果関係を確認しているか
- 他の設備や工程にも同じ弱点がないか
- 類似問題への横展開を実施しているか
- 分析の過程が記録されているか
です。
管理者が
「原因は何か」
と一つの答えだけを求めると、現場は分かりやすい原因を一つ書こうとします。
しかし、品質問題は複数の要因が重なって起きることがあります。
一つの原因だけで説明しようとすると、重要な弱点を見落とす可能性があります。
管理者は、原因の深さと広さの両方を見る必要があります。
まとめ
品質改善における原因分析では、原因を縦と横に展開することが重要です。
縦の展開とは、一つの原因を深く掘り下げ、直接原因から管理上の原因へ近づくことです。
横の展開とは、原因候補を複数の視点から広く洗い出し、類似工程や他設備にも同じ弱点がないか確認することです。
縦だけでは、最初に選んだ原因以外を見落とす可能性があります。
横だけでは、原因候補が並ぶだけで真因にたどり着けません。
そのため、
横に広げる。
重要な原因候補を選ぶ。
縦に深く掘る。
新しい要因が見えたら再び横に広げる。
原因が確認できたら類似箇所へ横展開する。
この流れが大切です。
また、発生原因だけでなく、流出原因、拡大原因、管理上の原因も確認する必要があります。
一件の不良を止めるだけではなく、同じ仕組みの弱点を組織全体から取り除くことが再発防止につながります。
原因分析は、原因を一つ書いて終わる作業ではありません。
縦に深く掘り、横に広く見て、問題が生まれた構造を明らかにする活動
です。
原因の深さが対策の質を決めます。
原因の広さが再発防止の範囲を決めます。
縦と横の両方から原因を見ることが、同じ不良を繰り返さない品質改善につながるのです。

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