製造品質は現場だけでは作れない――本当に品質を作っているのは誰なのか

「品質は現場で作られる。」

製造業では、この言葉を耳にする機会が少なくありません。

確かに、製品を実際に作っているのは製造現場です。
作業者が材料を加工し、組み立て、調整し、検査し、製品として完成させます。
そのため、「品質は現場が作る」という考え方は、一見すると正しいように思えます。

しかし、本当に製造品質を作っているのは、現場だけなのでしょうか。

もし品質が現場だけで決まるのであれば、同じ設備、同じ材料、同じ手順で作業しているにもかかわらず、不良が発生する理由を説明できません。
また、設計不良や材料不良、設備トラブル、管理不足による品質問題も説明できません。

品質問題が発生すると、現場へ原因を求める企業があります。

「作業ミスではないか。」
「確認不足ではないか。」
「教育が足りなかったのではないか。」
「作業手順を守っていないのではないか。」

もちろん、そのようなケースもあります。

しかし、多くの品質問題は、一人の作業者だけが原因ではありません。

設計段階で品質を作り込めていなかった。
設備精度が安定していなかった。
材料にばらつきがあった。
工程設計に無理があった。
作業標準が分かりにくかった。
管理方法が適切でなかった。
教育や力量確認が不足していた。
品質データが十分に活用されていなかった。

このように、品質は多くの人の仕事が積み重なって出来上がります。

つまり、

製造品質は、一人で作るものではありません。

設計者。
生産技術者。
設備担当者。
購買担当者。
品質管理部門。
管理監督者。
そして製造現場。

全員が品質づくりに関わっています。

品質改善を進めるうえで最も危険なのは、

「品質は現場が作るものだから、現場だけが頑張ればよい。」

という考え方です。

品質は、会社全体で作るものです。

製造品質とは、工程の中だけで生まれるものではありません。

企画から始まり、設計、生産準備、製造、検査、出荷、さらには顧客が使用するまで、一つの流れとして作られていきます。

今回は、「製造品質は誰が作るのか」という視点から、品質改善に必要な役割分担について考えてみましょう。

製造品質は工程の中で作られる

品質管理では、よく次の言葉が使われます。

「品質は検査で作るものではなく、工程で作り込むものである。」

この言葉には非常に重要な意味があります。

検査では、不良品を見つけることはできます。

しかし、不良品を良品へ変えることはできません。

品質を決めるのは、

加工条件。

設備精度。

材料品質。

作業方法。

工程設計。

作業環境。

管理方法。

これらです。

つまり、品質は工程そのものの能力で決まります。

工程が安定していれば、良品は自然と増えます。

工程が不安定であれば、どれだけ検査しても不良は発生し続けます。

そのため、製造品質は工程の中で作られると言われるのです。

作業者は品質づくりの最前線にいる

製造現場で最も品質に近い存在は、作業者です。

作業者は毎日製品を加工し、組み立て、確認しています。

異常を最初に発見するのも現場です。

設備の音が違う。

材料の色が違う。

加工感覚がいつもと違う。

製品の寸法がおかしい。

工具の摩耗が早い。

こうした変化に最初に気付けるのは作業者です。

そのため、作業者は品質づくりに欠かせない存在です。

しかし一方で、作業者だけに品質責任を押し付けることは適切ではありません。

作業者が品質を守れるような環境を会社が準備する必要があります。

設計品質が悪ければ製造品質も良くならない

どれだけ優秀な現場でも、設計品質が悪ければ製造品質には限界があります。

例えば、

組み立てにくい構造。

公差設定が厳しすぎる。

加工方法を考慮していない設計。

材料特性を十分考慮していない仕様。

これらは現場では改善できません。

製造工程は設計どおりに作ることはできます。

しかし、設計そのものが品質を作り込めていなければ、高品質な製品にはなりません。

設計品質と製造品質は切り離せない関係なのです。

生産技術は「品質が作れる工程」を設計する

生産技術部門は、品質を安定して作れる工程を設計します。

設備選定。

工程設計。

治具設計。

加工条件。

自動化。

ポカヨケ。

検査方法。

これらは生産技術の重要な仕事です。

例えば、

誰が作業しても品質が安定する。

部品を逆向きに組み付けられない。

設定値を間違えられない。

不良が発生したら設備が停止する。

このような工程を作ることが、生産技術の役割です。

品質は人の注意力だけでは安定しません。

工程そのものを強くすることが重要です。

購買部門も品質を作っている

品質問題の原因は社内だけとは限りません。

購入部品。

原材料。

外注加工。

これらの品質も製品品質へ大きく影響します。

どれだけ社内工程が優秀でも、

品質の悪い部品。

ばらつきの大きい材料。

納入品質の安定しないサプライヤー。

これでは良い品質は作れません。

購買部門は価格だけでなく、

品質。

納期。

供給能力。

改善活動。

これらを総合的に管理する必要があります。

品質管理部門は品質を見える化する

品質管理部門は品質を作るというより、

品質を見える化する専門部門です。

不良率。

工程能力。

顧客クレーム。

検査結果。

品質データ。

改善効果。

これらを分析し、

「何が起きているのか」

「どこに問題があるのか」

を会社全体へ伝えます。

また、

原因分析。

是正処置。

再発防止。

水平展開。

品質教育。

これらを支援する役割も担っています。

管理監督者は品質文化を作る

管理監督者は、

品質第一。

異常を隠さない。

問題を早く報告する。

標準を守る。

改善を続ける。

こうした文化を作ります。

現場では管理者の考え方が品質に大きく影響します。

納期だけを重視する職場では品質問題が増えます。

品質を評価する職場では改善活動が活発になります。

品質文化は管理監督者が作ると言っても過言ではありません。

経営層も品質を作っている

品質改善は現場だけの仕事ではありません。

改善予算。

設備投資。

教育。

人員配置。

品質方針。

顧客重視の姿勢。

これらは経営層が決めます。

例えば、

老朽設備を更新しない。

教育時間を確保しない。

改善活動を評価しない。

こうした環境では品質改善は進みません。

品質文化は経営から始まります。

全員が品質の当事者である

品質改善が進まない会社には共通点があります。

品質は品質管理部門の仕事。

品質は現場の仕事。

品質は検査員の仕事。

品質は管理者の仕事。

このように責任を分けてしまいます。

しかし、本来は違います。

設計は設計品質。

購買は購入品質。

生産技術は工程品質。

現場は製造品質。

品質管理は品質保証。

管理者は品質マネジメント。

経営層は品質文化。

それぞれが品質を作っています。

一人でも欠ければ高品質は維持できません。

品質改善は「責任追及」ではなく「役割分担」で進める

品質問題が起きると、

「誰が悪かったのか」

を探し始める会社があります。

しかし、本当に重要なのは、

「誰が改善できるのか」

という視点です。

設計が改善すべきこと。

設備が改善すべきこと。

現場が改善すべきこと。

管理者が改善すべきこと。

品質部門が改善すべきこと。

それぞれ役割があります。

品質改善は犯人探しではありません。

役割を明確にし、

全員で品質を高めていく活動なのです。

品質は「一人の力」ではなく「組織の力」で決まる

世界トップクラスの製造業には共通点があります。

品質を個人の能力へ依存していません。

優秀な人がいるから品質が良いのではありません。

誰が作業しても同じ品質になる仕組みがあります。

そのため、

標準作業。

教育。

設備管理。

工程管理。

品質管理。

改善活動。

これらが一体となっています。

品質とは、

人の能力だけではなく、

組織の総合力

なのです。

管理者が見るべきこと

管理者は次の点を確認することが重要です。

  • 品質責任が現場だけへ集中していないか
  • 設計・生産技術・購買・品質部門が連携しているか
  • 工程で品質を作る仕組みになっているか
  • 品質データが改善へ活用されているか
  • 作業者が異常を報告しやすい環境になっているか
  • 品質教育が継続されているか
  • 部門間で責任の押し付け合いになっていないか
  • 経営層が品質改善を支援しているか
  • 品質文化が職場へ根付いているか
  • 全員が品質を自分の仕事として考えているか

まとめ

製造品質は、製造現場だけが作るものではありません。

設計者は設計品質を作ります。

生産技術は品質が安定する工程を作ります。

購買部門は安定した材料品質を確保します。

品質管理部門は品質を見える化し、改善活動を支援します。

管理監督者は品質文化を育てます。

経営層は品質を最優先に考える組織を作ります。

そして製造現場は、そのすべてを形にして製品を作ります。

つまり、製造品質とは、

会社全体の力が形になったものなのです。

品質改善を成功させる企業は、現場だけに品質を任せません。

「品質は全員で作るもの」

という考え方を組織全体で共有しています。

製造品質は一人では作れません。

だからこそ、全員が品質の当事者となり、それぞれの役割を果たすことが、強い品質と顧客からの信頼につながっていくのです。

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