パレート図で“効く対策”を見つける――問題解決は大きな原因から手を打つ

問題解決を進めるとき、現場にはさまざまな問題が見えてきます。

不良が多い。
手直しが多い。
作業ミスが多い。
設備トラブルが多い。
納期遅れが発生している。
クレームが出ている。
検査で不適合が見つかっている。

しかし、問題が見えてきたからといって、すべてに同じ力で対応することはできません。

人手には限りがあります。
時間にも限りがあります。
費用にも限りがあります。
現場の負担にも限界があります。

だからこそ、問題解決では、
どの問題から手をつけるべきか
を決めることが非常に重要です。

問題が10個あるからといって、10個すべてを同時に改善しようとすると、力が分散します。
どれも中途半端になり、効果が見えにくくなることがあります。
反対に、影響の大きい問題から重点的に対策すれば、少ない力でも大きな改善効果を出せる可能性があります。

そこで役立つのが、QC七つ道具の一つである
パレート図
です。

パレート図とは、問題や不良の種類を件数や影響の大きい順に並べ、どこに重点を置くべきかを見える化するグラフです。
棒グラフと累積比率を組み合わせて、全体の中で何が大きな割合を占めているのかを分かりやすく示します。

例えば、不良がいくつもある場合、パレート図を見ると、上位の数種類の不良が全体の多くを占めていることがあります。
この場合、まず上位の不良に対策を打つことで、全体の不良件数を大きく減らせる可能性があります。

つまりパレート図は、
問題解決の優先順位を決めるための道具
です。

問題をたくさん並べるだけでは改善は進みません。
どれが大きな問題なのか。
どこに力を集中すべきなのか。
どの対策が効果を出しやすいのか。
そこを見えるようにすることが、パレート図の大きな役割です。

パレート図とは何か

パレート図とは、データを大きい順に並べた棒グラフに、累積比率を表す折れ線を加えたグラフです。

例えば、不良種類別の件数を集計したとします。

傷が50件。
汚れが30件。
欠けが15件。
寸法不良が10件。
ラベル間違いが5件。

このようなデータを件数の多い順に並べます。
そして、各項目が全体に占める割合や、上位から順に足し上げた累積比率を示します。

そうすると、どの不良が全体の大部分を占めているのかが分かります。

パレート図の特徴は、
問題の大きさが一目で分かること
です。

表で数字を見ているだけでは、どの問題が重要なのか分かりにくいことがあります。
しかし、パレート図にすると、棒の高さで問題の大きさが見えるため、重点対策を考えやすくなります。

品質管理では、不良の種類、クレームの内容、設備停止原因、作業ミスの種類、手直し内容など、さまざまな場面で使うことができます。

パレート図は重点管理に役立つ

パレート図の最大のメリットは、重点管理に役立つことです。

すべての問題を同じように扱うのではなく、影響の大きい問題を優先して対策する。
これがパレート図の考え方です。

例えば、不良が100件あったとして、そのうち60件が同じ原因や同じ種類の不良だったとします。
この場合、その不良に対策を打てば、全体の不良を大きく減らせる可能性があります。

一方で、1件や2件しか発生していない不良を先に対策しても、全体の改善効果は小さいかもしれません。
もちろん、件数が少なくても重大な不良であれば優先すべき場合はあります。
しかし、通常の改善活動では、まず影響の大きいものから見ることが効率的です。

パレート図は、
どこから手をつければ改善効果が大きいか
を考えるために役立ちます。

問題解決では、努力の量だけでなく、努力を向ける場所が重要です。
パレート図は、その場所を見つけるための道具です。

少数の大きな問題を見つける

現場の問題には、よく次のような傾向があります。

問題の種類は多く見える。
しかし、実際には一部の問題が大部分を占めている。

例えば、不良種類が20種類あるとしても、上位3種類で全体の70%を占めていることがあります。
設備停止の原因が多く見えても、実際には特定の設備や特定の部品トラブルが大半を占めていることがあります。
クレームの内容が多様に見えても、上位数項目に集中していることがあります。

このような状態を見つけるのに、パレート図は有効です。

パレート図を見ることで、
「全部が問題に見えるが、本当に大きいのはこの数項目だ」
と分かります。

これにより、対策の優先順位が明確になります。

問題が多いと、現場はどこから手をつければよいか迷います。
しかし、パレート図で上位項目が見えれば、改善の入口がはっきりします。

パレート図は感覚ではなく事実で判断できる

問題解決で注意したいのは、感覚だけで優先順位を決めないことです。

「あの工程が悪い気がする」
「あの不良が多いと思う」
「あの設備が怪しい」
「あの作業者のところで多い気がする」

このような感覚は、きっかけとしては大切です。
現場の経験からくる感覚には意味があります。
しかし、感覚だけで判断すると、実際のデータと違う場合があります。

パレート図を使えば、事実に基づいて判断できます。

どの不良が何件あるのか。
どの原因が全体の何%を占めているのか。
どの工程に問題が集中しているのか。
どの項目から対策すべきか。

これが数字とグラフで見えるようになります。

つまりパレート図は、
思い込みを減らし、事実で優先順位を決めるための手法
です。

問題解決では、感覚を否定する必要はありません。
しかし、最終的にはデータで確認することが大切です。
パレート図は、その確認に役立ちます。

チェックシートと組み合わせると効果的である

パレート図を作るためには、まずデータが必要です。
そのデータを集めるために役立つのが、前回取り上げたチェックシートです。

チェックシートで不良の種類や発生件数を記録する。
そのデータを集計する。
件数の多い順に並べる。
パレート図にする。

この流れで、問題の重点が見えるようになります。

例えば、チェックシートで次のようなデータを集めます。

  • 不良種類別の件数
  • 工程別の発生件数
  • 設備別の停止件数
  • クレーム内容別の件数
  • 手直し理由別の件数
  • 作業ミス種類別の件数

このデータをパレート図にすると、どの項目が大きいかが分かります。

つまり、チェックシートは事実を集める道具です。
パレート図は、その事実から重点を見つける道具です。

この二つを組み合わせることで、問題解決は進めやすくなります。

パレート図の作り方

パレート図の作り方は、難しくありません。

まず、対象を決めます。
例えば、不良種類別、工程別、設備別、原因別などです。

次に、データを集めます。
チェックシートや実績記録から、件数や金額、時間などを集計します。

その次に、件数や影響の大きい順に並べます。
ここが重要です。
パレート図は、大きい順に並べることで重点が見えるグラフです。

そして、全体に対する割合を計算します。
さらに、上位から順に足し上げた累積比率を求めます。

最後に、棒グラフと累積比率の折れ線を組み合わせます。

この流れにより、どの項目が全体の何%を占めているのかが分かるようになります。

パレート図を作るときに大切なのは、
何を基準に並べるか
です。

件数で見るのか。
金額で見るのか。
時間で見るのか。
影響度で見るのか。

目的によって、見るべき基準は変わります。

件数だけでなく影響度でも見る

パレート図では、件数で見ることが多いです。
しかし、件数だけで判断すると、優先順位を誤ることがあります。

例えば、小さな不良が50件あり、重大な不良が3件あったとします。
件数だけ見れば、小さな不良の方が上位になります。
しかし、顧客への影響や損失金額を考えると、重大な不良を優先すべき場合があります。

そのため、パレート図では目的に応じて基準を選ぶことが大切です。

例えば、

  • 件数で見る
  • 損失金額で見る
  • 手直し時間で見る
  • 顧客影響度で見る
  • 停止時間で見る
  • 再発回数で見る

このように、問題の性質に合った指標で見る必要があります。

品質不良なら件数だけでなく、顧客影響や流出リスクも考える必要があります。
設備トラブルなら発生件数だけでなく、停止時間を見るべき場合があります。
手直しであれば、件数よりも手直し工数の方が重要な場合もあります。

つまりパレート図は、何を重要とするかによって見え方が変わります。

上位項目を対策すれば効果が大きい

パレート図で上位項目が見えたら、そこから対策を考えます。

例えば、不良件数の上位が「傷」「汚れ」「欠け」だったとします。
この3つで全体の70%を占めているなら、まずこの3つに対策することで、大きな改善効果が期待できます。

ここで重要なのは、上位項目をさらに深掘りすることです。

「傷」が多いと分かっただけでは、まだ原因は分かりません。
どこで傷が発生しているのか。
どの製品で多いのか。
どの工程で多いのか。
どの作業の後に発生しているのか。
どの時間帯に多いのか。

ここを確認する必要があります。

つまり、パレート図は原因を直接示すものではありません。
重点的に調べるべき問題を示すもの
です。

上位項目を見つけたら、次に層別、特性要因図、なぜなぜ分析などを使って原因を深掘りします。
そして、原因に合った対策を実施します。

パレート図は改善前後の比較にも使える

パレート図は、改善前の問題を見つけるだけでなく、改善後の効果確認にも使えます。

例えば、改善前のパレート図では「傷」が最も多かったとします。
その対策を行った後、再度データを集めてパレート図を作ります。

すると、

  • 傷が大きく減った
  • 全体の不良件数が減った
  • 別の不良が上位に出てきた
  • 対策した不良は減ったが、全体はあまり変わっていない
  • 新しい問題が発生している

といったことが分かります。

改善前後でパレート図を比較すると、対策の効果が見えます。
また、次に取り組むべき問題も見えてきます。

問題解決では、対策を実施して終わりではありません。
効果を確認し、次の改善につなげることが大切です。

パレート図は、その流れを助けてくれます。

パレート図は会議での説明にも使いやすい

パレート図は、関係者に問題の状況を説明するときにも非常に使いやすいグラフです。

表で数字を並べても、すぐには伝わりにくいことがあります。
しかし、パレート図にすると、どの問題が大きいかが視覚的に分かります。

例えば、会議で
「不良全体のうち、上位3項目で75%を占めています」
と説明できれば、なぜその項目から対策するのかが伝わりやすくなります。

また、関係者の認識をそろえることにも役立ちます。

現場はA不良が多いと感じている。
品質部門はB不良を問題視している。
管理者は全体件数を見ている。
このように見方が違う場合でも、パレート図を見れば、同じデータをもとに話し合うことができます。

パレート図は、
問題の優先順位を関係者で共有するための道具
としても有効です。

パレート図を使うときの注意点

パレート図は便利ですが、使い方を誤ると判断を間違えることがあります。

まず、データの分類が曖昧だと、正しいパレート図になりません。
例えば、「傷」「外観不良」「その他」の分類が曖昧だと、記録する人によって分類が変わります。
その結果、実態と違うグラフになることがあります。

次に、データ期間にも注意が必要です。
1日だけのデータでは、一時的な偏りかもしれません。
逆に、期間が長すぎると、最近の変化が見えにくくなることもあります。
目的に合わせて、適切な期間を設定する必要があります。

また、件数だけで判断しないことも大切です。
件数が少なくても、重大な品質問題や安全問題は優先すべき場合があります。

さらに、「その他」が大きくなりすぎている場合も注意が必要です。
その他が大きいということは、分類が粗い可能性があります。
その場合は、その他の中身をさらに分けて見る必要があります。

パレート図は、データの作り方によって結果が変わります。
だからこそ、分類、期間、指標、目的を明確にして使うことが大切です。

パレート図は原因分析の入口である

パレート図を見ると、上位の問題が分かります。
しかし、上位項目が分かっただけでは、まだ問題は解決しません。

例えば、「傷」が一番多いと分かったとします。
しかし、それだけでは、なぜ傷が発生しているのかは分かりません。

搬送時に傷がつくのか。
作業台で傷がつくのか。
部品同士が接触しているのか。
治具に問題があるのか。
作業方法に問題があるのか。
梱包時に傷がつくのか。

ここを調べる必要があります。

つまりパレート図は、原因分析の入口です。
重点的に見るべき問題を決めるための道具です。

上位項目が分かったら、次に層別を行います。
工程別、設備別、作業者別、時間帯別、製品別に分けて見ます。
さらに、特性要因図やなぜなぜ分析で原因を深掘りします。

パレート図は、問題解決の始まりであって、終わりではありません。

管理者が見るべきこと

管理者がパレート図を見るときには、単に上位項目だけを見るのではなく、その意味を考える必要があります。

見るべきことは、

  • データの分類は適切か
  • 集計期間は妥当か
  • 件数で見るべきか、損失金額や時間で見るべきか
  • 上位項目は全体の何%を占めているか
  • 上位項目に対して対策が打たれているか
  • 改善前後で変化があるか
  • その他が大きくなりすぎていないか
  • 件数は少ないが重大な問題を見落としていないか
  • パレート図の結果が次の原因分析につながっているか

です。

管理者にとって大切なのは、パレート図を見て
「これが多い」
で終わらせないことです。

多いなら、なぜ多いのか。
どこで発生しているのか。
どの原因が関係しているのか。
どの対策を優先するのか。
効果は確認できたのか。

ここまで確認する必要があります。

パレート図は、現場を責めるためのグラフではありません。
重点を決め、改善を効率よく進めるためのグラフです。

まとめ

パレート図は、QC七つ道具の一つであり、問題解決に非常に役立つ手法です。
問題や不良の種類を大きい順に並べ、累積比率を合わせて見ることで、どの問題が全体に大きな影響を与えているかを見える化できます。

問題解決では、すべての問題に同じ力をかけることはできません。
だからこそ、重点を決める必要があります。
パレート図を使えば、どの問題から手をつけるべきかが分かりやすくなります。

チェックシートで事実を集める。
パレート図で重点を見つける。
層別や特性要因図、なぜなぜ分析で原因を深掘りする。
対策を行い、改善後に再びパレート図で効果を確認する。
この流れが、問題解決を強くします。

ただし、パレート図は作って終わりではありません。
上位項目が分かったら、なぜ多いのかを調べる必要があります。
また、件数だけでなく、損失金額、手直し時間、顧客影響度など、目的に合った見方をすることも大切です。

パレート図は、問題を一気に解決する魔法の道具ではありません。
しかし、改善の力をどこに集中すべきかを教えてくれる、非常に実務的な道具です。

問題解決は、やみくもに頑張ることではありません。
大きな原因を見つけ、そこに力を集中することです。
その判断を支えてくれるのが、パレート図なのです。

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